木造住宅って耐震性は大丈夫?
⇒木造住宅の耐震性に疑問を持っている方
⇒木造住宅の耐震性について知りたい方
◆今回の記事を読むと以下の事がわかります。
⇒木造住宅の耐震性の高め方
⇒既存住宅の耐震性の高め方
***↑ wallstat channelさんより ***
さあ、あなたが今、【家を建てよう】と思ったとします。そこですぐに何造りにしよう?って考えますか?木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造?どれにしようかな~とは多分考えずに、ほとんどの方は住宅展示場に行って気になるハウスメーカーさんがたまたま木造だった、鉄骨造だったという感じじゃないでしょうか?
それでも良いんですが、鉄骨造のハウスメーカーさんは木造を悪く言い、木造のハウスメーカーさんは鉄骨造を悪く言ったりします。それがお客様にとって正確な情報であれば良いのですが、ほとんどの営業マンは自社に有利な情報だけを伝えるのではないでしょうか?木造や鉄骨造・鉄筋コンクリート造それぞれに一長一短の特徴があります。そんな中、今回は木造住宅の耐震性についてお客様からご質問がありましたので書いてみたいと思います。
木造住宅は地震に弱いの?
この記事のもくじ
ではまずは基本的な事から。
木造住宅とは、その名の通り鉄骨や鉄筋コンクリートなどではなく木材で作られた住宅のこと。
木造住宅は木材の温かみや木の匂いの感じられる住宅であり、環境にも優しいということもあって「木造の住宅を建てたい!」と希望される方も多いんです。そして建築費用も他のつくりに比べお値打ちだと言う事も特徴の一つです。
「鉄骨とか鉄筋コンクリートの方が地震に強くて安心?」と聞かれることも多いんですが、実は木造は他と比べても耐震性に劣る、ということはないんですよ。
今回はその理由も含めて、木造住宅の耐震性についてお話していきたいと思います。
木造住宅の工法は1つではない
木造住宅の建て方、いわゆる工法は「在来工法」「ツーバイフォー」というものがあります。
ハウスメーカーによっては独自の工法によって建築しているところもあるのでこの限りではありませんが、多くはこの2つの工法がベースとなっているんじゃないでしょうか。日本に昔から伝わっている「在来工法」と、「ツーバイフォー」では若干デザインや機能性も変わってきます。今回は耐震性についてだけ言うとどちらが強い弱いとは言えません。どちらも構造計算をすれば問題ありません。
木造住宅の耐震性と新耐震基準の関係
木造住宅に限った話ではないのですが、震度6~7でも耐えられる住宅かどうかは「新耐震基準」で建てられているかどうかにかかわってきます。これって震度7が連続した熊本地震でも耐えられる、ということなのでかなり強い耐震性を持っているということになります。実際に構造面ではコンクリートや鉄骨などと比較しても遜色があるわけではないんです。
木造住宅は軽いから=揺れに強い
どう考えたって木よりコンクリートとかのが強いでしょ?!
パパ
わ~パパかっこいいわ~。
ママ
みなさん同じ様な疑念がわくと思います。。。でも!木造住宅はきちんと新耐震基準にのっとり、しっかりと設計して建築されれば強い!それは何故か?それは木造住宅は軽い!というのが大きなポイントなんです。
例えば、3歳児を肩車した状態で押された場合と、大人を肩車した状態で押された場合の踏ん張り方はどちらが力が必要となりますか?どちらが地面に足がめり込みますか?軽い買い物袋と、重い買い物袋を同じように揺らしても大きく揺れるのは重い方の袋、ということを考えていただければ想像しやすいのではないでしょうか。せっかく硬いもので建築されていても地盤に建てんのがめり込んでしまえば倒壊しやすくなってしまいます。。。
すこし話題がそれますが、住宅の重さが書いてある以前のブログを一番最後に貼っておきます。
↑ホホ毛の長い外人の写真
木造住宅の5つの耐震性チェックポイント
では、新築する際に一般エンドユーザー様が何を気にしたらよいのかについて。は下記の5つのポイントです。
①建物重量(軽いほうが良い)
②耐力壁の数(多いほうが良い)
③耐力壁と耐震金物(バランスが重要)
④床の耐震性能(つよさ)
⑤壁の直下率(1階2階の壁配置)
建物の重さや耐力壁の数、そして金物や床。見落としてしまいがちなポイント直下率もあるのではないでしょうか?
建売物件などを見に行くと「我が社は耐震等級3なんですよ」といわれることもありますよね~。じゃ、耐震等級ってどんなもの?どれだけあれば安心なの?というのをご理解いただけるお話を続けて紹介します。
耐震性を表す耐震等級をチェック
耐震性というのは「建物がどの程度の揺れに耐えられるか」を示していて、明示的にしたのが「耐震等級」です。
耐震等級には1~3まであって数字が大きい方が耐震性が高いというもの。
耐震等級1
『倒壊に対しては、極めて稀に発生する地震(数百年に一度程度の頻度―東京を想定した場合、気象庁の震度階で震度6強から7程度)に対して倒壊、崩壊しない。 そして、建物が損傷を受ける程度を、稀に(数十年に一度程度)発生するの地震による力(東京を想定したときの震度5強程度)に対して損傷を生じない程度 』
(国交省、性能表示制度の解説より引用)
耐震等級2
耐震等級1に対して1.25倍の耐震性能がある。
耐震等級3
耐震等級1にたいして1.5倍の耐震性能があるということを覚えておいてください。
耐震等級2や3となるためには、壁の量だけでなく上下階の比率や1で用いる地震係数より厳しい数値で算出した数値を用いて計測するなど、基準そのものも厳しくなりますし、それ相応の根拠が必要となります。
はい、余計わからなくなりました!。
パパ
はい、もっとわかりやすく説明してください!
ママ
ですよね?最低限、耐震等級1は心配だと覚えていていただければ良いです。。。
オガタ
ここで注意しておかないといけないのが、
耐震等級を取るためには構造計算が必須です!←これ大事↑
構造計算によってその強さが証明されないと、どこまで行っても耐震等級〇〇相当となり、悪く表現すれば自称耐震等級となり何の意味もありません。。。
耐震等級3の物件は地震保険が半額に!
複雑な構造計算をして耐震等級を取るとなるとそれ相応に費用が発生してきます。ここで、「お金が掛かるなら耐震等級なんて必要ないわ~」なんて考えは持たないでください。家族の命を守る家なんですから。
少し話がそれましたが、持ち家となると火災保険に加入する方がほとんどだと思います、この火災保険にかかる費用も大きな出費。割と勘違いされているのが地震が起因して発生した火災は火災保険ではカバーされないという事。
ではどんな保険でカバーしてくれるの?それが地震保険です。でも地震保険加入となると保険料も5年一括払いで20万円程度かかります。(*金額は地震保険金額により変わります)。先ほど紹介した耐震等級3をクリアした物件に対しては、このたかーい地震保険が半額になる!という嬉しいポイントも忘れないでくださいね!
木造住宅に有効な耐震補強(既存住宅の場合)
新築の際は、設計者さんやハウスメーカー・工務店さんと色々相談しながら耐震等級3を目指していけますので問題ないと思いますが、既存の住宅の場合はどうしたらいいの?と言う方も当然いると思います。そんな場合は下記の事に注意して工事を依頼してみても良いかもしれません。
- 屋根部分の補強ないし変更
建物の重さが揺れに大きく影響することは先ほどお伝えした通りです。例えば現在が重い瓦屋根だとしたら軽い屋根に変更するのも手ではあります。耐震補強をする場合には、屋根材を丈夫で軽い素材に変更することも効果ありです。
- 壁の補強・建物の接続部分の補強
筋交いを追加したり構造用合板を追加するなどして、耐震壁を増やすというのも有効ですが、ただ強い壁を増やしたからと言って【大丈夫】と言う訳ではありませんので設計士さんとご相談の上。壁が強くなったという事はそれだけ他の部分に力が伝達しやすくなったという事です。という事は?
- 基礎部分の補強
壁が強くなった分、その地震力は基礎に伝わってきます。その力に押しつぶされたり引き抜かれたりしない様に基礎の補強も大切になります。【そこまではやってられないでしょ~】という場合には基礎と土台部分をつなぐ金物を増設するという方法もありますが、やっぱりこれも設計士さんとご相談の上。
耐震性を確認する方法は2つある(既存住宅の場合)
大事な家族を守るマイホームの耐震性、どうやって確認すればよいかも気になりますよね?
簡単な方法としては、国土交通省住宅局が運営している誰でもできるわが家の耐震診断を使ってみる。
自宅でもネット環境さえあれば、指示された通りの項目を入力していくだけで簡易的な診断が可能!
でもこれはあくまでも「この結果次第で専門家に相談したほうがいいか知りたいな。」という程度のものと認識しておいてくださいね。耐震診断の入り口です。
もう一つは専門家の診断を仰ぐという事。自治体の建築行政担当に問い合わせをすることで詳細を教えてもらえます。費用もお住まいの地域によりますが、耐震診断費用だけでなく耐震改修工事の補助をしてくれたり、無料になる自治体もあるようですので、調べてみてください。既存住宅の場合まずは現状を把握する事から始めましょう。
耐震性を決める要素ってなに?
耐震性耐震性って結局何で決まるの?早く教えて!
パパ
それそれ!それが知りたい!
ママ
耐震性を決める要素、、、気になりますよね?この項目1つだけをやれば大丈夫!って事が無いから難しいんです。。。
家の重量や地盤(固さによる増幅率)、耐力壁は多い方が耐震性もUPしますがバランスも大切です。その他には、もちろんですが家を支える構造物として柱も大切。基礎と土台をつなぐ金物も大切。基礎から家が外れたりしては意味がありません。
以前、地盤について書いたブログはこちら
耐震性について、もう一つ大きなポイントとして「直下率」という1階と2階の壁の配置の仕方です。
もちろんですが1階から2階まで同じ位置に柱や壁がつながっている方が耐震性はUPします。これは熊本地震でも「直下率が低い方が倒壊率が高かった」ということで業界では有名な話になっています。
*ものすごく簡単に表現すると1階と2階の壁の位置がずれている方が崩れやすい*
そしてもう一つ重要なのが設計。あまりトリッキーな間取り(1階と2階の壁の位置が一つも合っていない場合や大きすぎる開口寸法等)は避けた方が良いかもしれません。そして設計通りの品質を保った施工がおこなわれているかをチェックする施工管理体制も大切になってきます。職人の腕が出やすい木造建築では特に、施工管理がきちんと行われていることが重要になってきます。
木造住宅は他と比べても耐震性が劣ることなく優秀な建造物
木造って地震に弱そう…
という疑念は払しょくしていただけたでしょうか?
なるほどね!色んなバランスを考えた計画と構造計算が大切なんだね。
パパ
既存住宅の場合はまずは、現状を知る事からなんだね~!
ママ
しっかりと設計・施工管理がされていれば、耐震性は十分に兼ね備えている木造住宅。
もちろん耐力壁や耐震金具が適切に使われていて、直下率もしっかりと考えられたものという条件もあるので忘れないでくださいね。これはどの建物にも言える事です。
建築を依頼する際にはここで紹介したポイントで、耐震性に不安がない住宅を建ててくれる業者かどうかのチェックをしっかりしてみてください。
おまけ
以前書いたブログに 建物の重量について書いてあります↓