施主さんに聞いてみた! ”耐震等級を上げる理由
施主さんにリサーチした”耐震等級を上げる理由
30年以内に大地震がくる確率は70%、と言われてからすでに数年が経過した今思うこと。
『大地震がくるのは仕方ない。その後のことはその時考えればいいや~♪』なんて楽観視している方も少なくない…ですかね?建築業界に身を置くオガタとしても…せっかく家を建てるならやっぱり安心して提供できる住宅を建てたい!と思うわけです。
もちろん家を建てるのは施主さん、そしてそのご家族ですから僕のエゴを押し付けすぎて家を建てるわけにはいかないことは重々承知で。。。
でも…せっかく建てた家が崩れて施主さん一家が困ってしまう未来を分かっていながら放置するのも無責任なのでは?そんな葛藤もあるわけで。。。
現実問題、地震に強い耐震等級の高い家を建てるにはお金もかさみます。そこで今回は注文住宅を建築された方々の中でも、地震対策についても考慮した家を建てた方が、「どうしてお金をかけてでも耐震等級の高い家にしたのか」をリサーチしてみました。
耐震等級3の家を建てた施主さんが考えた耐震等級を高めたい理由
この記事のもくじ
まずは耐震等級としては一番高い”耐震等級3”の家を建てた施主さんのお話から。
どんな理由で耐震等級3の家にしたのか聞いてみるとこんな理由をこたえてくれました。
・子供も一緒に生活しているので在宅中の安心のため
・地震で避難所にいくことに不安があるから
・地震で住むところがなくなるのは困るから
・地震で大規模修繕なんてそんなお金ないから!
見ていただいて疑問を感じる方も少ないのかなーと想像してみてるわけですが…それぞれ詳しく掘り下げてきいてみたので以下にまとめていきますね。
子供も一緒に生活しているので在宅中の安心のため
今回リサーチしたAさん(仮名)は30代ご夫婦と、小学生・未就園児のお子さん、あわせて4人でお住まいです。
自宅は大地震が来たら警戒しなくてはいけないエリアで、注文住宅で建てられています。参考までに、海や大河川からは離れている場所であることも一応お伝えしておきます。
なぜかと聞くと…
「子供が小さい、ということで必然的に家で過ごす時間も長くなります。家にいる間に大震災がくる可能性も高いと考えて、耐震性能の高い家を検討しました。」
とのこと。
家の細部にこだわっていたのはご主人ですが、この点に関しては奥さんが特に気にされていましたね。
「家財道具が壊れるのは仕方ない、と諦めもつくけど地震のせいで倒壊とか大きな損壊が起こってしまって子供に何かあったら自分も間違いなく後悔する。そのための費用ならむしろお金がかかるからやめるという選択肢は無かったです。」
ともおっしゃっていました。
地震で避難所にいくことに不安があるから
これに関しても掘り下げてきいてみましたよ~。答えはどうだったのかというと…
「うちは男の子と女の子が一人ずつ。正直自分(奥さん)も知らない人のところで寝起きすることには不安も大きく感じるタイプです。でも、やっぱりそういう場所で二次災害的に被害にあわれる方もいるらしい、という話も気になっていたので、子供になにかあっては困る、という意識が強くあります。
実はこれまで台風でも避難したほうがいいか、考えるべきタイミングもあったのですがその時もぎりぎりまで自宅にいました。うちは水害にあうことはあまり想定しずらい立地にあるので、どちらかというとシャッターを付けていない大きな窓が割れたりしたときの被害のほうが気になっていたんですが…。避難所に避難する同じ立場の人を疑ってしまう事には若干罪悪感もあったんですが、耐震性能を上げておくことで少しでも避難所生活のリスクを軽減できるならしたい、そういう思いがあります。」
とのこと。
もちろん男の子だから安心、とかも思っていないのですがこういう不安もあるんですね。確かにこれも災害時に懸念点として上げているご家庭も結構あるんですよね。
地震で住むところがなくなるのは困るから
さて、これについては本当にその通り!としかいいようがないですよね。とはいえ掘り下げないのももったいないので聞いてみると…
『地震で家が壊れました。さて建て替えましょう!』と簡単にできる問題ではないな、と思ったんです。一軒新築するのだってうん千万円かかるわけですし、まだローンも残っている状況でそんなことになったら…保険で全額出るとも思えないし。家財道具に関しては致し方ないとしても、家だけは無事でいてくれないと困る!と思うんですよ。子供にだってまだまだお金かかりますから!
ですよね~。
簡単に建て替えできるなら、今も大震災から避難所で暮らしている方はいないでしょう。家があれば生活の基盤はあるところから生活を立て直していくことはできます。家がなくなったり、大きく損壊したりしていては生活の立て直しどころではなくなってしまいます。
それに大震災が起こるようなことになれば、精神的にも大きなダメージがあるはず。そこに慣れ親しんだ家もなくなってしまった、新しい環境で生活しないといけない。というのも大きなストレスになるのではないでしょうか。
地震で大規模修繕なんてそんなお金ないから!
これも本当にその通り!
「家が崩れてなくなる、までいかなくても基礎から立て直しになるような損壊になったらしばらくは家を借りながらなおすことになるじゃないですか。仕事もあるかわからない状況で、どれだけお金がかかるかわからない時期を過ごす不安はとても大きいです。それこそ子供もいて、生きていくのにもお金が必要になりますから、子供に無駄に不安な生活をさせるのも極力避けておきたいんです。」
とのこと。
確かに大規模修繕が必要な状況になればいろいろとお金もかかりますし時間も必要です。それにすぐに修理に取りかかれる業者がある、とも限らないんです。今も去年の千葉の台風被害で壊れたお宅ですら、修理に取り掛かってもらえていないお宅もあるくらい。皆さんこれは本当に想像できないくらいに業者さんが不足します。圧倒的に業者数が不足します。また、その機に乗じて悪徳業者も出現したりします。
業者の数にも限りがある、ということも重要なポイントになってきそうですね。
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熊本地震で耐震等級3は倒壊しなかったという事実
Aさん宅が耐震等級を上げて家を建てた理由について紹介してきました。
でも…「本当に耐震等級3にすれば家は大丈夫なのか?」という疑問をお持ちの方もいるでしょう。当ブログでも過去に何度か耐震等級や地震について取り上げてきましたが…実際、震度7が本震・余震と続けて起こった熊本地震の例を紹介しましょう。
耐震等級1の家は持たなかった。耐震等級2の家でも無事では済まなかった。
でも耐震等級3の家は一軒も崩れたり損壊することもなかった、というのが現地の調査で明らかになっています。
耐震等級1というのはあくまで新耐震基準にのっとった最低ラインの耐震性能しかありません。耐震等級3は震度7クラスが立て続けに起こっても平気なくらい丈夫に建てられた家。当然住まう家族の命も守ります。
だからこそ、これから大地震が起こるといわれている今、家を建てるなら耐震等級3をおすすめしたい!と思っているのであります!
耐震等級を気にするなら耐震等級3相当に惑わされないで
最後に耐震等級を上げる理由について解説してきたということで…過去記事についてもおさらい的に簡単に紹介してきます。耐震等級に関する別記事【耐震等級にも色々ある】でも取り上げましたが、言葉こそ似ていてもまったく別もの!
”耐震等級3”と”耐震等級3相当”という言葉の間にある溝はとても深い!そのことについてはしっかり覚えておいてくださいね!
たった漢字二文字の違いですが、強度も構造も大工さんや建築士の思いも全く別物になってしまうんですから。こちらで紹介させていただいたAさんのように、耐震性能を気にされて家を建てる施主さんが増えてきたことはとてもうれしく思っているんです。
ここをチェックしていただけた皆さんにも、そのメリット・意義をご理解いただけたらと願っています!
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