冬でも太陽の角度を知るだけで日当たりがいい家で暖かく快適に暮らせる!
「冬は暖く夏は涼しい家」にするには、性能が高い断熱材や窓を選ぶだけでは足りません!
もちろん性能が高い設備選びも大切ですが、それ以上に「家に太陽が入りやすい角度」を押さえて日当たりがいい家づくりを進める方が重要です。今回は高気密高断熱の家づくりを手がけてきた建築士が、冬でも暖かい家にするために大切な太陽の角度や日当たりについてご紹介します。
冬でも日差しが入る暖かい家にするために大切なこと
この記事のもくじ
家を建てる時はもちろん、賃貸物件を探す時も「日当たり」が気になり南向きを希望される方が多いです。
もちろん南向きに窓があると洗濯物が乾きやすく、日中から電気を付けることなく自然光で過ごせたり、朝気持ちよく目覚めることができるため、日差しはやはり大切な条件の一つです。
しかし、日当たりが良いということは「夏には暑い家になるリスクもある」といったデメリットがあげられます。デメリットを踏まえると「日差しを避けるべきか?」と考えてしまいますが、そんなことはありません。
重要なのは「日当たりの良い立地に快適に過ごせる家を作ること」で、以下の3点がポイントなので押さえておきましょう。
- 冬は日差しが入る家づくりをする
- 夏の日差しは遮る
- 日当たりがさほど良くなくてもOK
日当たりのいい家はコストカットや快適に過ごせるといっただけではなく「SDGs」の観点からもこれからの未来を生きる子ども世代にとってもメリットです。
「SDGs」が普及するとともに生まれたのが、地球にも人にも優しい「パッシブデザイン」と呼ばれる空間づくりにも注目が高まりました。土地の特性を読み込みプランニングすることがいい家づくりの第一歩となります。
たとえば、南に開口を設けた部屋の窓から入る夏の日差しを遮るために庇(ひさし)を設ける方法があり、これは人間で言うなら帽子のツバの役割です。
庇(ひさし)はあくまで夏の暑い日差しを適度に遮るサイズにすることもポイントで、冬でも日差しは取り込みやすくなるメリットがあります。
ほかにも、植栽で日影を作ったり自然の力を借りて心地よい風を取り入れる設計をする方法も有効です。
夏と冬では太陽の高さが異なる
私たちの暮らしに光と暖かさをもたらす太陽は、季節や時間によって日当たりの範囲が変わってきます。
最も大きく太陽が高い位置に太陽がある6月の夏至と、 太陽が一番低くなる12月の冬至の時期では図のように角度が倍以上に異なるため、室内温度にも差が生まれてしまうのです。
このように太陽の位置が低い冬のことを考えると、部屋の奥まで日当たりがいい間取りにする必要があります。
日当たりがいい太陽の角度を計算しよう!
日本は赤道から北に35度 の位置にあるので、夏は日射を長く受けて暑く、日射が短くなる冬は寒くなります。
たとえば、私が暮らす愛知県では夏至の日照時間は約15時間で冬至になると10時間程度になります。夏と冬では日照時間の差は約5時間にもなことから、寒くなってしまうのも無理はありません。
以下では、冬と夏にどのような角度で日差しが差し込むかについて、時差・経度・緯度の資料をもとにご紹介します。
冬至の頃の太陽日射角度を計算しよう
最も太陽が低くなる冬至のころの太陽の高さは以下の式で求められます。【入射角度(太陽の高さ)= 90度 − 計測点の緯度 − 23.4(地軸度)】
愛知県の緯度は大体35度なので
【入射角度(太陽の高さ)=90 − 35 − 23.4 = 31.6(度)】となります。
夏至の頃の太陽日射角度を計算しよう
最も高い位置に太陽がある夏至のころにどの高さに太陽があるのかは、以下の式で求められます。
【入射角度(太陽の高さ)=90度 − 計測点の緯度 + 23.4(地軸度)】
愛知県の緯度は大体35度なので
【入射角度(太陽の高さ)=90 − 35 + 23.4 = 78.4(度)】となります。このように数値で比較すると、太陽の角度が大きく異なることがわかります。
誰でも簡単にできる!太陽の角度を知る方法
季節が移り変わっても快適に過ごす家にするには、設計時点でしっかり確認しておく必要があります。
設計士に相談することも可能ですが、自分でも簡単に確認できるので、ぜひチェックしてみてください。
step① 物件の南側の構造がわかる断面図と日射角度を準備
バルコニーや庇(ひさし)で、各季節ごとにどれだけ日射が取り込めるのか、また夏の熱い日差しをよけることができるのかを確認しましょう。
太陽の角度を知ることで「本当にこれで理想としている暮らしができる家が立つのか」をチェックできますね。
※シミュレーション方法は前章でお伝えした通り、至って簡単!愛知県では大体緯度が35度なので、夏至⇒78.4度/冬至⇒31.6度でしたね!
step② 分度器・定規を用意
断面図に算出した入射角度で、季節ごとに色分けした日差しを示す線を書き込んでみてください。
※1階2階を含めて、吹き抜けの場合はそのまま2階からの日差しが1階部分まで届くことをお忘れなく!
大きな庇(ひさし)やバルコニーは夏の暑い日差しをよけてくれる心強い存在ではありますが、日差しが欲しい冬や春先にどのくらい日差しが得られるかも確認しておくことをおすすめします。
算出した入射角度に基づき日差しを示す線を描いた断面図を見ながら、夏と冬どれだけ太陽光を取り入れたいか、庇の大きさやバルコニーの配置などを検討してみましょう。また、日射角度の直線状に背の高い建物や大きな植栽がある場合、日差しが遮られることがあるため注意が必要です。
ここまで 計算の仕方などをご紹介しましたがアプリで簡単に計算できる方法もあります。お手持ちのスマホで「太陽 角度 アプリ」と検索してみてください。
冬でも日当たりがいい家づくりには植栽がおすすめ
庇の大きさ(建物から張り出した長さ)によって日差しをどのくらい遮るのか、日差しを何がなんでも遮ってしまうと年間通して快適とはいえないこともお話ししました。
とがいっても「夏暑いのはイヤ!」という方もいらっしゃると思います。
そのような場合に植栽を配置する方法がおすすめです。
夏には青々と茂り、冬には葉を落とす落葉樹を植える、と夏は適度に日差しを遮ってくれ、冬には日が入りやすくなるのです!緑溢れる空間は視覚的に涼しく感じるだけでなく、樹木の蒸散効果によりその周辺の温度を下げる働きもあります。
暑い季節をさわやかに過ごせるだけでなく、日本ならでは四季の移り変わりも楽しめるので個人的におすすめです。
太陽の心地よい日差しを入れて快適な家をつくろう
冬でも快適に過ごすためには、太陽の角度を理解し、日当たりの良い家づくりが重要です。
高性能な断熱材や窓だけではなく、南向きの窓や庇の設計を工夫することで、冬は暖かく夏は涼しい環境を実現できます。また、落葉樹を使った植栽により、季節ごとに日差しを調整することもおすすめです。
太陽の角度を知るだけで簡単に日当たりの良い家をつくることができるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。