HEAT20 G3とは?
YOUTUBEやSNS等を見ているとHEAT20という言葉を何度か聞いた事があると思います。現時点では最もグレードの高いG3ですが、そのG3とはどんなものなのかをなんとなく【これ位なんだ〜】程度で良いのでお伝えできればと思います。
以前ブログにした時はまだHEAT20 G3グレードが無かった為、今回は追加で記事を書く事にしました。
以前のブログはこちら
今年こそは家をつくるぞ!ということを考え始めた時に気になってくる様々な基準やグレード、ありますよね。建築に携わるものとしても、どんどん新しいものが生み出されてくるので日々勉強する事は必要不可欠ですし、これから新築される方は自分の家に直結する事なのでどんどん積極的に情報を取りに行ったりします。
今回はその中でも「HEAT20」が提唱しているグレードについて取り上げてみようと思います!簡単に説明すると「長期的な視点から住宅の省エネルギー化、住まう人の健康維持と快適性向上のため」の基準を定めたのが一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会
- (英語名)
- Society of Hyper- Enhanced insulation and Advanced Technology houses for the next 20 years
- (略称名)
- HEAT20
と言うことで「HEAT20」。
そこで提唱されている3つのグレードの最も高い水準となるG3について解説させていただきますのでチェックしてください。
◆今回はこんな方の為に書いています。
⇒HEAT20という言葉を初めて聞いた方へ
⇒HEAT20 G3???何それ?って方へ
◆今回の記事を読むとこんな事がわかります。
⇒HEAT20の概要がわかります。
⇒断熱の基礎的なことがわかります。
HEAT20って何?最もグレードが高いG3はどんな基準?
この記事のもくじ
HEAT20というのは2009年に北海道総合研究機構の理事が幹事となり発足した「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」の呼称です。
このメンバーとして参加しているのは専門知識を持つ研究者の方々や、住宅・建材の生産者団体の有志といった面々なんですね。
◇理事・役員
- 理事長:坂本 雄三東京大学 名誉教授
- 理 事:鈴木 大隆(地独)北海道立総合研究機構 理事
- 理 事:岩前 篤 近畿大学 建築学部長 教授
- 理 事:砂川 雅彦株式会社砂川建築環境研究所 代表取締役
- 監 事:新井 政広株式会社アライ 代表取締役
すごいメンバーです。
住宅の断熱性能を向上させるため、そしてその先に見据える居住者の健康維持、快適性をUPさせよう!ということを目的として技術開発・評価手法について研究しながら、そうして作られた住宅を普及させよう!と活動している団体で、日本の建築業界に高性能住宅の定義を投げかけつつ業界全体の底上げを目指しているのだと個人的には思っております。
HEAT20/G3の基準と仕様について
HEAT20ではG1・G2・G3と3つのグレードに分けてそれぞれの基準を定めています。
HEAT20の中で、もっともエントリーしやすいのがG1、そして最もハードルが高く高水準となるのがG3。
温度で簡単に解説してしまうとそれぞれこのようになってます。(それぞれの室温は冬の暖房期の無暖房状態の室温です)
- 【G1】最低室温を概ね10℃に保つこと
- 【G2】は省エネ基準地域区分1・2地域を除き概ね13℃
- 【G3】は概ね15℃以上を確保すること
暖房なしでこの気温なら確かにエコの観点からもポイント高いですよね。
この水準を満たすための基準、あくまでも目安としていますが外皮平均熱還流率(UA値)についてまとめられている表があるので、そこを参照するとこのようになっています。
(ちなみにUA値というのは住宅の室内から外に向かって逃げる熱量を平均したもので、値が小さいほど省エネルギー性能が高い=断熱性が高いということの目安になる数値です。)
【地域区分6のUA値基準】
(※愛知県の地域区分は4~7なのでここでは参考に地域区分6でご紹介しています)
- 【G1】UA値:0.56
- 【G2】UA値:0.46
- 【G3】UA値:0.26
参考:表3 地域別の代表都市と外皮平均熱還流率|外皮性能水準
HEAT20はあくまでも目安で目的ではない、としていますがこれだけみてもG2とG3では大きな数値的な隔たりがあることがわかりますね。
実務的な話ですが、G2くらいまではこのエリアでは【付加断熱なし】でもクリアできますが、G3になると【付加断熱必須】となります。
付加断熱とは 関連記事
HEAT20のG3は一気に性能があがり、平たく言ってかなり高性能な家になります。
ちなみにG3はドイツのパッシブ住宅を目指した性能で、真冬でも無暖房室で室内温度を15℃を下回らない水準を満たした家を作るということ。
もちろんお金もかかります。かかりますが長く住まう家である、ということを加味して考えたときどうか…ということにもなりますね。
またお金をかければできて当然ですが、それだけではなくハウスメーカー・工務店それぞれの工夫やアイディアも存分に活かせる、腕の見せ所という事にもなるでしょうか。
【小ネタだけど大事なポイント】健康で快適に過ごせる室温は18度(by WHO)
WHO(世界保健機関)が提唱する冬場の室内温度と健康へのリスクのレポートにて、『(室内温度が)おおむね18度以上であれば、各種疾患のリスクを軽減することができる』と提唱されています。
単純に快適だ、という話ではなく高血圧やアレルギー、脳の健康面に関する様々な症状に悩まされるリスクを軽減できる「健康に過ごせる温度」なのだとか。
その温度が18度。そうなんです・・【単純にHEAT20のG3をクリアしただけでは足りていない】ということを覚えておいてください。
でもね、、、それは無暖房で15℃であればお日様の日射があればポカポカと暖かくなるのは想像しやすいですよね?その為には設計時に【太陽の動き】を設計プランに考慮することが必須になると言う事です。
関連記事
HEAT20のG3仕様とハウスメーカー・工務店の企業努力とは
G3グレードは、真冬に無暖房でも室内の体感温度が15℃を下まわらない断熱性能。
これをWHOの定めた室温まで無暖房で上げるとなると・・・昼間の太陽光で室内温度をあげてもらってキープできる作りにするということが重要なのではないかと考えます。
ということでポイントになるのは【G3+南側の大きな窓からの採光!と断熱性能向上!】ということにもなるかと思いますが、それだけではない・・・?のか・・・?と気になって調べてみました。ハウスメーカーや工務店さんがどんな企業努力がされているのか簡単にまとめてみると…
・地域的に熱還流率が良い高性能なサッシが使えない(準防火・防火地域なので)ので断熱材の厚みで調節している
・高性能だとどうしても値段が上がってしまう…ということで企業努力を重ねて少しでも価格を抑えて基準をクリアする商品を開発している
というようなことも見受けられました。準防火地域や防火地域では「このサッシじゃないとダメ」という基準が別途設けられているため、HEAT20の示すG3をクリアするためには、単純に高性能のサッシを入れて断熱効果を上げるということができないんですよね。
こうなると他の部分でクリアしなくてはいけなくなるわけで…断熱材など他の部分の工夫を重ねてなんとか基準をクリアしよう、と努力を重ねている方々も多いです。さらにここにWHOの提唱する基準もクリアしよう…となると…相当な努力が必要になるわけです。難しいですが施主さんに安心と満足をお届けしよう!と頑張るわけですね。
もちろん、省エネ地域区分によっても価格と折り合いを付けながらG3(それ以上を目指す同士もいます)をクリアするために求められる企業努力は違ってきますから、一概にはいえません。
G3をクリアしただけでは不十分!ということはなくて十分快適に、少しの暖房で冬暖かく過ごせるのですが、WHOまで気にするかどうかはそれぞれ次第でもありますし、施主さん次第という側面もあります。
まとめ
HEAT20の提唱するG3というのが、冬の寒さ厳しいドイツの、エコにとにかく配慮したパッシブ住宅をモデルとした水準である、というお話しでした。
そこに更にWHOのまとめた、健康に暮らせる室温の基準も無暖房状態で目指すかどうかは、ハウスメーカーや工務店の企業努力と施主さんのご希望・予算的兼ね合いも含めて検討すべき問題です。ですがG3をクリアするだけでも、ハウスメーカー・工務店には様々な努力や工夫が必要になります。簡単ではありません。
施主さんには希望もあれば予算もあります。作り手としても「いいもの作るのだからそれ相応のお金はかかります」ではなくて、限りある条件のかなで最大限の【解】を出すためにいつも試行錯誤しています。そんな時間を乗り越えて個別解が解けた時まるでパズルが一気に完成して行くような感覚が気持ちよかったりします。
色々と検討して工夫して、折り合いを付けながらの部分もありつつ、できるだけ良いものを作りたいと思うのです。
これから家を建てよう、とされていらっしゃる皆さんにも、こちらでご紹介したHEAT20の基準やWHOの話を参考にしつつ、快適に安心して暮らせるお家を建てていただけたらと思います!