耐震等級5は新しい基準?についてのお話し

住宅を購入する際、多くの方が耐震性能を重視します。しかし、最近「耐震等級5」という表記を目にすることが増えてきました。実は、日本の公的な制度では耐震等級は1~3までしか存在しません。では、「耐震等級5」とは一体何なのでしょうか?これはハウスメーカーや工務店が独自に用いている表現であり、公的な基準ではありません。消費者が誤解・誤認してしまう危険性があるため、正しい耐震基準を理解することが重要です。この記事では、「耐震等級5」表記の問題点や、住宅の耐震性能を正しく判断するためのポイントを解説します。
耐震等級とは?基本的な仕組みを理解しよう

住宅の耐震性能を理解するためには、まず「耐震等級」という基準について正しく知ることが重要です。耐震等級は、住宅の耐震性を数値化し、比較しやすくするための指標であり、「住宅性能表示制度」に基づいて定められています。
耐震等級1~3の違い
耐震等級は以下の3段階に分かれています。
- 耐震等級1(最低基準)
- 建築基準法の耐震基準を満たす最低限のレベル。
- 数百年に一度の大地震(震度6強~7)でも倒壊しないとされる。
- ただし、大地震後の修繕が必要になる可能性がある。
- 耐震等級2(等級1の1.25倍の強度)
- 災害時に避難所となる学校や病院などの施設で採用されることが多い。
- より耐震性を高めた設計で、大地震時の被害が軽減される。
- 耐震等級3(最高等級:等級1の1.5倍の強度)
- 警察署・消防署などの防災拠点で採用される。
- 地震時の倒壊リスクが最も低く、安全性が高い。
このように、耐震等級3が公的な最高レベルの耐震性能とされています。そのため、「耐震等級5」といった表記は公式には存在せず、誤解を招く表現といえます。
住宅性能表示制度と耐震基準
耐震等級は、国土交通省が定める「住宅性能表示制度」に基づいて認定されます。この制度は、消費者が住宅の性能を客観的に比較できるようにするために導入されたものです。
また、日本の耐震基準は1981年(新耐震基準)と2000年(現行の耐震基準)で大きく強化されています。特に、2000年基準以降の住宅は、柱や壁の配置のバランスが厳しく規定されており、より耐震性の高い設計が求められています。
耐震等級3が最高等級である理由
現在、日本の住宅における耐震等級の最高レベルは「3」です。これは、耐震等級3が災害時の防災拠点レベルの強度を持つため、それ以上の基準が公的には設定されていないためです。
一部の企業が「耐震等級4」や「耐震等級5」と表記することがありますが、これは独自の基準によるものであり、住宅性能表示制度には該当しません。そのため、消費者は誤認しないよう注意が必要です。
「耐震等級5」は存在しない?誤認のリスクとは

最近、一部のハウスメーカーや工務店が「耐震等級5」という表記を使用しているケースがあります。しかし、公的な耐震等級は1~3までしか存在せず、「耐震等級5」は正式な基準ではありません。ここでは、その誤認のリスクについて解説します。
「耐震等級5」は公的な基準ではない

「耐震等級5」という表現が問題視される理由は、それが住宅性能表示制度に基づいた基準ではなく、企業が独自に設定したものだからです。
- 日本の耐震等級は**国が定めた住宅性能表示制度(国土交通省)**で1~3までしか認められていない。
- 「耐震等級5」と書かれていても、公的な機関で認証を受けた数値ではない。
- 消費者が「耐震等級5だから、耐震等級3よりも優れている」と誤解する可能性がある。
このように、公式な認定を受けていない「耐震等級5」という表記を信用しすぎると、住宅の本当の耐震性能を正しく判断できなくなるリスクがあります。
どのような企業が「耐震等級5」を使っているのか

「耐震等級5」という言葉を使っている企業は、主に次のようなケースが見られます。
独自の耐震基準を設けているハウスメーカー
- 耐震等級3を取得した上で、追加の補強を施し、「耐震等級5相当」とアピールしている。
- しかし、その「5相当」は第三者機関の評価ではなく、企業の独自基準であることが多い。
耐震等級3に制震・免震技術を組み合わせている業者
- 耐震性をさらに向上させた住宅を「耐震等級5」と表現することがある。
- ただし、制震や免震は耐震等級とは別の概念であり、公的な「耐震等級5」というものは存在しない。
消費者の関心を引くためのマーケティング戦略
- 「耐震等級5」と書くことで、他社との差別化を図る。
- 実際には耐震等級3と同等の性能である可能性もある。
消費者が誤解する可能性
消費者は「耐震等級5」という表記を見たときに、次のように誤認する危険があります。
- 「耐震等級3よりも高い性能だから、より安全な家だ」と思い込む
- 公的な認定基準だと誤解し、他の家と正しく比較できなくなる
- 「耐震等級3以上の地震でも耐えられる」と錯覚する
実際には、耐震等級3を超える基準は公的には存在しないため、「耐震等級5」だからといって、耐震性能が保証されているわけではありません。
より安全な住宅を選ぶために必要な知識
「耐震等級5」という表記が公的に存在しない以上、本当に地震に強い家を選ぶためには、耐震性の正しい知識を持ち、確実に安全な住宅を選ぶことが重要です。ここでは、耐震等級だけに頼らず、より安全な住宅を選ぶためのポイントを解説します。
耐震+制震・免震の考え方
耐震等級3の住宅を選んだからといって、必ずしも最高の地震対策とは限りません。地震の揺れを軽減するには、「耐震」「制震」「免震」の3つの技術を組み合わせることが理想的です。
- 耐震構造(揺れに耐える)
- 建物の柱や壁を強化し、地震の揺れに耐える設計。
- 耐震等級3を取得することで強固な構造を確保できる。
- 制震構造(揺れを吸収する)
- 建物の内部にダンパー(制震装置)を設置し、揺れのエネルギーを吸収する。
- 建物の変形や損傷を軽減し、繰り返しの地震にも強い。
- 免震構造(揺れを建物に伝えない)
- 建物の基礎部分に免震装置を設置し、地面の揺れを直接建物に伝えない。
- 地震時の揺れを大幅に減らし、家具の転倒などの被害も抑えられる。
耐震等級だけでなく、制震・免震技術を取り入れることで、より安心できる住まいを実現できます。
住宅の構造や工法が重要
建物の耐震性能は、構造や工法によって大きく異なるため、次の点をチェックしましょう。
- 木造・鉄骨造・RC造の違い
- 木造:軽量で柔軟性があり、適切な設計をすれば耐震性能は高い。
- 鉄骨造:強度が高く、変形しにくいが、揺れが大きくなることもある。
- RC造(鉄筋コンクリート造):重量があるため、適切な設計が必要だが耐震性は高い。
- 壁量と耐力壁のバランス
- 耐震性を高めるためには、耐力壁の量と配置が重要。
- 窓が多すぎると耐力壁が不足し、耐震性が低下することがある。
- 基礎の強度と地盤の安定性
- 地盤が弱いと、耐震等級3の住宅でも安全とはいえない。
- 地盤調査をしっかり行い、適切な基礎工事を施すことが重要。
信頼できる住宅メーカーの選び方

耐震性能を強調する住宅メーカーは多いですが、信頼できる企業を見極めるためには、次の点をチェックしましょう。
✅ 耐震等級3の認定を正式に取得しているか
- 「耐震等級5」等の曖昧な表現でなく、正式な耐震等級3の認定を受けているかを確認。
- 住宅性能評価書が発行されているかもチェックする。
✅ 施工実績や評判を調べる
- 過去の施工実績や、実際に住んでいる人の評判を確認。
- 過去に耐震偽装などの問題を起こしていないかも重要なポイント。
✅ 第三者機関の評価を活用する
- 住宅性能評価機関や、国が推奨する長期優良住宅の認定を受けているかを確認。
- 信頼できる評価機関の情報を参考にすることで、より安全な住宅を選べる。
「耐震等級5」と記載された住宅を見つけたら?

もし住宅広告や説明資料で「耐震等級5」という表記を見つけた場合、その耐震性能が本当に信頼できるものなのかを慎重に判断する必要があります。ここでは、具体的に確認すべきポイントを解説します。
施工会社に確認すべきポイント
「耐震等級5」と書かれた住宅を検討する場合は、以下のような質問を施工会社に投げかけることが重要です。
✅ 「耐震等級5」という基準はどこが認定していますか?」
- 住宅性能表示制度には「耐震等級5」は存在しないため、公的な評価機関による認定ではないことが多い。
- 企業独自の基準なら、その詳細を確認する。
✅ 「耐震等級3の住宅性能評価書は取得していますか?」
- 耐震等級3の認定を受けていない住宅であれば、「耐震等級5」の表記は信頼性が低い可能性がある。
- 公的な評価書が発行されているかをチェックする。
✅ 「具体的にどのような工法や構造で耐震性を向上させていますか?」
- 追加の耐震補強、制震装置の導入、基礎の強化など、具体的な対策を確認する。
- 曖昧な説明しかない場合は、慎重に判断する。
第三者機関の評価をチェックする

信頼できる耐震性能を持つ住宅かどうかを確認するためには、公的な第三者機関の評価を活用するのが有効です。
- 住宅性能表示制度(国土交通省)
- 耐震等級の正式な評価を受けているかをチェック。
- 「耐震等級3」と認定されているかが重要なポイント。
- 長期優良住宅認定
- 一定の耐震性能や劣化対策が施されている住宅に対し、国が認定を行う制度。
- 長期優良住宅の基準を満たしているか確認する。
- 住宅保証機関の認定
- 住宅性能評価を行う第三者機関(日本住宅保証検査機構など)の評価をチェック。
- 独自の「耐震等級5」という表記ではなく、公的な認定を受けているかを確認。
長期優良住宅や住宅性能評価を活用する
「耐震等級5」と書かれた住宅に対して、不安を感じる場合は、長期優良住宅の認定を受けた住宅や住宅性能評価書が発行された住宅を選ぶことで、より安心できます。
- 長期優良住宅:国が認定する高性能住宅で、耐震等級3が求められる。
- 住宅性能評価書:耐震性能や劣化対策について、第三者機関が評価した証明書。
これらの認定があるかどうかを確認し、「耐震等級5」という言葉に惑わされず、本当に信頼できる基準で住宅を判断することが大切です。
Q&A:耐震性能に関するよくある疑問

ここでは、耐震等級に関するよくある疑問について、Q&A形式でわかりやすく解説します。
Q1. 耐震等級3でも倒壊のリスクはあるの?
A. 可能性はゼロではありません。
耐震等級3は、建築基準法の1.5倍の耐震強度を持ち、非常に強い耐震性能を誇ります。しかし、すべての地震に完全に耐えられるわけではなく、地盤の状態や建物の老朽化などによっては倒壊のリスクがあります。また、揺れによって家具が転倒する危険もあるため、耐震等級3であっても家具の固定などの防災対策は必要です。
Q2. 耐震等級と建築基準法の関係は?
A. 耐震等級1が建築基準法の最低基準です。
建築基準法では、「震度6強~7の地震でも倒壊しない強度」を求めています。これは耐震等級1の基準と同じです。
- 耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の強度。
- 耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の強度。
つまり、耐震等級が高いほど、建築基準法の最低基準を超えた強度を持つということになります。
Q3. 「耐震等級5」が今後、公的な基準として採用される可能性はある?
A. 現時点ではその予定はありません。
耐震等級3が「消防署や警察署などの防災拠点レベルの強度」であるため、これ以上の公的な耐震等級は必要ないと考えられています。しかし、今後の地震被害の状況や建築技術の進歩によって、新しい基準が設けられる可能性はゼロではありません。
Q4. 免震や制震の家は、耐震等級とは別の評価?
A. はい、免震や制震は耐震等級とは別の考え方です。
耐震等級は建物の強度を評価する基準ですが、免震や制震は「揺れを軽減する技術」です。
- 制震構造:揺れを吸収して建物の損傷を抑える(ダンパーなどを使用)。
- 免震構造:地震の揺れを建物に伝えにくくする(免震装置を基礎部分に設置)。
耐震等級3の家でも、免震・制震技術を取り入れることで、より地震に強い住宅を実現できます。
Q5. ハウスメーカーごとの「独自耐震基準」は信用できる?
A. 信頼性の確認が必要です。
「耐震等級5」などの独自基準を設けているメーカーは多いですが、これは公的な基準ではなく、各企業が独自に設計した強度を表しているだけです。
- 本当に耐震性が高いのか、耐震等級3の認定を受けているかを確認しましょう。
- 第三者機関の住宅性能評価や、長期優良住宅の認定を受けているかをチェックしましょう。
メーカー独自の基準だけでなく、公的な認定を受けた住宅かどうかを見極めることが大切です。
まとめ

住宅の耐震性能は、地震の多い日本で安心して暮らすために欠かせない要素です。しかし、最近見かける「耐震等級5」といった表記には注意が必要です。
本記事のポイント
✅ 耐震等級は公的に1~3までしか存在しない
✅ 「耐震等級5」という基準は公的には存在せず、住宅性能表示制度で認められているのは耐震等級1~3のみです。耐震等級3が最高基準であり、消防署や警察署と同レベルの強度を持ちます。
✅ 「耐震等級5」という表記には誤認のリスクがある
✅ 一部のハウスメーカーや工務店が独自の基準として「耐震等級5」を使用していますが、これは公的な認定基準ではありません。そのため、「耐震等級5=耐震等級3よりも強い」と誤解してしまう可能性があります。
✅ 耐震等級だけでなく、制震・免震の技術も重要
✅ 耐震等級3の住宅でも、制震装置や免震構造を取り入れることで、さらに安全性を高めることができます。耐震性だけに頼るのではなく、総合的な地震対策を考えることが重要です。
✅ 住宅購入時は公的な認定を確認する
信頼できる住宅を選ぶために、以下の点をチェックしましょう。
✅ 耐震等級3の住宅性能評価書があるか?
✅ 長期優良住宅の認定を受けているか?
✅ 第三者機関の評価を取得しているか?
✅ 「耐震等級5」という表記を見たら、必ず詳細を確認する
「耐震等級5」と記載された住宅を見つけたら、その基準を施工会社に確認し、実際に耐震等級3の認定を受けているかどうかをチェックすることが大切です。
耐震性能を正しく理解し、公的な基準に基づいた住宅を選ぶことで、本当に地震に強い安全な家を手に入れることができます。安易なキャッチコピーに惑わされず、確かな情報をもとに住宅を選びましょう。